映画を観る時間が、とにかく無いものです。忙しい日々ですが、たまにこういう映画を観ると、嬉しいものだなあ。
それにしても、タイトルがお見事ですね。言葉の大海原を渡る為の、小さな小さな一艘の小舟。それが辞書、か。
それは一見頼りなくとも、実はなんとも力強く、頼りになるものなのです。
舟=辞書
編む=編纂する
辞書を作ること=舟を編むこと
という意味なのだと理解しました。うーむ、お見事です。
実際に告白しますと9割9分9厘はオダギリジョー目当てで観たものでして、
そのオダジョーがこれまたね、飄々と良い役をこなしてた時点でバッチグーなのですが、
マジメ改め馬締光也の役である松田龍平。うまいなあ。マジメな変人をお見事に演じておりました。
それにしても彼が、辞書編集部に異動されたのは幸運な出来事ですよね。
辞書編集部に行かなかったら。辞書を作るという、まさに彼にとっての転職にめぐり合わなかったら。
ただ単に「変な人、役に立たない人、困った人」な人物で終わってしまっていたであろうことは、想像に難くないでしょうから、、、
そう考えると、適材適所ってホンマに大切やなあ、と思う次第です。
オダジョー演じる西岡も、辞書編集部ではなく、広告編集部に行ったからこそ、辞書作りのサポートを見事にこなすことになったのかなあ、とも思う次第ですし。
自分にとっての適材適所ってなんやろか?それは自分で探し出せるものなのか?それとも向こうからやってくるものなのか?
うーむ、どうなんでしょうね?そんな事も考えてしまうものなのでした。
なんにせよ、生きていくうえで、仕事として「これぞ天職!」というものにめぐり合えることの幸運さよ。それは素晴らしいことなのです。
あえて不満点を挙げるとしたら、
1、登場人物がみんな善人過ぎること
性善説の映画やなあ、という感じでしょうか?原作の三浦しおんの価値観か、監督の石井裕也の価値観か、両方なのか。
そういう意味では、現実をリアルに表現したものではなく、ああ、ファンタジーやなあ、という感想にはなってしまいます。いや、それはそれでいいんですけれどもね。
2、馬締と香具矢の恋愛があっさりし過ぎていること
うーむ、宮崎あおい(香具矢)よ、そんなにあっさり松田龍平(馬締)を好きになるのかね?
という疑問点は、どうしても感じちゃいました。馬締は間違いなく良い人ですが、それを理解できるようになるのはね、
普通だったら相当時間かかるっしょ?大家さんぐらい長い時間を共にしたら、馬締の良さを理解できるのも納得ですけれども。
あんないい女に惚れられるって、馬締。それだけでおめーは幸せ者だよ、、、と悔しく歯噛みするのです。モテない男の自分としては。単なる嫉妬だねコレ。
まあ、こんなんは些細なことです。少々の不満点を遥かに凌駕する、良い映画を観ることができた。
その喜びは、やっぱりデカいなあ。
あ、麻生久美子の、ポスターだけの出演ってえのも、映画らしからぬ、ある意味凝った演出で素敵でした。
あの麻生久美子をそこだけに使うか!贅沢至極!みたいな。
「時効警察」で、オダジョーと麻生久美子のコンビの魅力にメロメロだった自分としては、この映画でも二人が競演?してるのは嬉しいことなのだぜ。
映画での設定として、広告宣伝部に移ったオダジョー演じる西岡が、
辞書の「大渡海」を宣伝するために最も魅力的な人物として麻生久美子を選んだ?みたいな感じになってるっぽいところが、また素敵ですね。
あ、池脇千鶴とオダジョーの恋人コンビも良かったねえ。ほんわかコメディー的で。
池脇千鶴といえば「ジョゼと虎と魚たち」がホンマ良かったですが、この映画の感じも素敵でした。
池脇千鶴、中村静香に似ているなあ~と思ったのですが、どうか?僕だけですかね?そう思うのは。
小説はまだ未読なんで、是非読んでみたいものです。映画化から入るか小説から入るか。
どっちも楽しめたら、最高なんでしょうなあ。三浦しおん、気になる気になります。
あ、監督の石井裕也も、他の作品も観てみたいなあ。
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